2024年2月29日 『PERFECT DAYS』プロフェッショナルな人の仕事

久々に映画を見に行きました。
ドイツのヴィム・ヴェンダース氏が監督した『PERFECT DAYS』です。
この映画で役所広司さんがカンヌ映画祭の最優秀男優賞を受賞したことが話題になりました。

役所さんの演じる主人公・平山は、東京都内の公衆トイレの清掃員です。
朝起きて布団を畳み、そして一連のルーティーンをこなし、
いつも通りの首都高を渋谷区のトイレ清掃に向かいます。
トイレ掃除を淡々と、しかし、感嘆するほどの丁寧さで仕事を行い、
つましい昼食は公園の木漏れ日のなかで食べます。
帰宅したら、銭湯で汗を流し、駅地下の居酒屋でチューハイを飲む、
観葉植物たちの水やり、毎晩寝る前に古本を読む…。

その決まりきった日常生活の描写から、
生きることへの不可避は義務感と、ささやかな喜びがたくさん登場します。
自分の価値観を大切にして生きる主人公に共感を覚え、
実直に生きることの尊さを、私の胸に熱く突き付けられました。
見終わった後の充実感があり、心豊かになる作品です。

この映画は渋谷区のトイレをお洒落なものにするプロジェクトのPRのために、
映像に残そうという発想から生まれたものです。
ヴィンダース監督は日本映画が好きで、
映画監督の小津安二郎さんをリスペクトしています。
日本人役者を使い、日本語で作られている事を考えると奇跡だと思います。
良い脚本、良い監督、良いカメラワーク、そして良い役者が揃うと、
撮影期間がたったの16日間でも、こんなにも素晴らしい映画が撮れるのか、
さすが、プロフェッショナルな人たちの仕事です。
映画というエンターテイメントの醍醐味を
とことん楽しめる仕掛けになっています。

この映画はすぐにも中国で放映されるでしょう。
果たしてこの作品が文化背景の違う中国人の琴線に触れるかどうか分かりません。
少なくても日本のトイレに関心を持って、
「おしゃれな公衆トイレを体験してみたい」、
映画主人公の「平山さんに会いに日本を訪ねたい」などの
経済効果をもたらすことに期待します。