2023年10月17日 文化への挑戦

今年の「ウルトラトレイル・マウントフジ」大会の優勝者は男女ともに中国選手でした。
このニュースを見たとき、「え~っ!本当ですか?」と思わず声を出してしまいました。
中国では手軽に登山を楽しむ文化が日本ほど普及していません。
さらに、中国はトレイルランニングを特に国家的に強化してないため、
各選手の置かれた競技環境は日本選手とそう変わりがありません。

早速、男性優勝者のインタビューと走る途中の動画をユーチューブで検索しました。
「富士山は子供時から憧れの山でした。森を見たとき、宮崎駿さんのアニメを思い出す。
アニメの世界に入り込んだような気分で走り、レースの景色も素晴らしかった。
中国から出て見て分かることと知らないことがたくさんある...」と熱く語る姿でした。

この大会会長を務めた鏑木毅さんは、39歳にトレイルランニングの最高峰
「UTMB」で4位、アジア選手の初入賞を果たしました。
これまでトレイルランニングはおもにヨーロッパ、
アメリカ選手が優勢を占めるスポーツでした。
その理由はアルプスが厳しいアップダウンが続く山々に加えて
アメリカには標高が高い山岳ルートが備えてあるからです。
欧米選手と同じレースで闘うため、トレイルランニングのトレニンーグとして
富士山の登山口から山頂を1日に3度往復したりと、通算500回以上走ったそうです。

鏑木さんは中国でのトレイルランニング先駆者でもあります。
2009年、2010年の北京レース(距離100キロ)で連覇し、
情報・経験が浅い中国選手の憧れであり目標でもありました。
当時の中国競技者数は日本と比べ多くなく、レベルもさほど高くがありません。
北京の大会後、中国での普及活動に携わり、講演やセミナーなどを行い、
言葉の壁、文化の違いに四苦八苦しながらも中国の若者に期待していました。
山は非日常を感じられ、挑戦心をかき立てられる刺激的な場所として、
山を登るのは若者に支持れされつつもあります。

現在のところ、日本と中国は国家ベースで考えますと、
必ずしも関係が良好とは言えません。
コロナ禍以前と比べ入国手続きなど煩雑となり、
最近の政事から両国とも感情的な言動がマスコミに煽り立て、
近くて遠い国になってしまった感も否めません。

それぞれの国で山岳エリアには特徴があります。
さらに各国でのレースにもローカルルールがあり、コーススタイルも異なります。
まだ始まって間もないスポーツの違いをお互いに議論し、
新たな知識をお互いに得て、日本と中国のさらなる普及につながります。

男性優勝者は、鏑木さんが中国でトレイルランニングを普及してくれたことに感謝しますと
インタビューの最後を締めました。
鏑木毅さんはアジア人として欧米勢の壁を破りたい、
そして、中国若者への期待、育成は、
まさにスポーツ文化への挑戦です!
日本と中国選手が輝く日が来るのを切実に願っています。

注:ウルトラトレイル・マウントフジ(ULTRA-TRAIL MT.FUJI)は、2012年から始まった、
山梨県・静岡県をまたいで開催されているトレイルランニングのウルトラマラソンレース。
総距離はおおよそ100マイル(約160キロ)、累積標高差は約8,000m、制限時間は46時間。
ウルトラトレイル・デュ・モンブラン(UTMB)の姉妹大会。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』