2023年9月14日 藍染めとコト消費

「藍染め」というと、足袋、剣道服、のれんや絞り染めの巾着袋などを
思い出す方が多いかと思います。
日本ではあまり知られていませんが、実は中国でも藍染めは一般的なもので、
図案があるものは「藍印花布(らんいんかふ)」と呼ばれています。
図案のない無地の藍染生地は「藍布」と呼ばれることもあります。

中国では、発酵が必要なため、温暖な南方を中心に藍染めが作られています。
その代表は貴州省と雲南省に生活している少数民族の地域です。
布生地に縁起が良いとされる動植物、物品など、型染め用の図柄を描きます、
さらに、藍で染めて木綿の布地を絞る作業をほとんど女性たちが行い、
農作業の合間を縫って、日常着あるいは婚礼や祭りの晴れ着として制作されてきました。

2006年に中央政府が藍染め技法を無形文化遺産の保護政策を打ち出し、
藍染め製品は伝統工芸品として価値が広く認知されるようになりました。
しかし、市場経済や教育の普及により、
それらの地域の少数民族の価値観にも大きな変化がありました。
後継者となるはずの若い世代の多くが進学や出稼ぎで村をを離れていることから、
技術の伝承は困難になっています。

一方で近年、中国の消費市場は自己実現欲求ための「こだわり消費」が現れています。
いま目の前にある商品にこだわるだけではなく、
商品の産地や工場、原材料や素材といった過去の情報から、
商品のストーリ性や使用による快感、満足感といった感情的な経験から
得られる価値を重視するようになっています。

藍染め文化は経済的な効率性や合理性だけで測ることはできませんが、
伝統文化を持つ人々の生活はより楽しいものとして深めることで、
消費者はモノ消費よりコト消費に変化しつつもあります。
コト消費のあとに時間差でモノ消費に到達すると推測できます。
藍染め制作の後継者が少ないという問題がありますが、
社会環境変化により藍染めが再評価されるのではないでしょうか。
なぜならば、大量生産できない藍染め製品は一針一針の手作業で
豊かな人間性に支えられたからです。