2025年4月19日 心躍る中国の藍印花布

上海の地下鉄2号線常熟路駅で降りて、徒歩約500メートルのところ、
古い住宅街に「中国藍印花布館」の看板があります。
その看板の店は路地の奥にあって、博物館、工房、販売店が合体したような場所です。
販売している藍印花布商品は、素朴でおおらかな絵柄と造りが私は好きです。

中国では、藍染めは「藍印花布」と呼ばれています。
図案のない無地の藍染生地は「藍布」と呼ばれることもあります。

藍印花布の工程は比較的簡単で、透かし彫りの型紙を使い、
白い綿生地に防染剤を塗って、染色すると、防染剤を塗られていない部分が青く染まり、
塗られた部分は生地の色が残って、藍と白の2色模様が現れます。
赤ちゃんの布団にコウモリの図案は、目の前に幸福があることを表し、
受験の時は、合格できるように登竜門の鯉の図案を使います。
千年ほど前から、庶民は絶えず新しい図案を作り出し、
あの手この手で好評を得ようとしてきました。
地域文化とも言える藍印花布は人々の一生と密接に関わっているのです。

藍染めと言うととても和風な響きを感じる方が多いかと思います。
藍染めの浴衣やのれん、絞り染めの巾着袋などを思いつくのではないでしょうか。
日本ではあまり知られていませんが、実は中国でも藍染めはかなり一般的なもので、
藍印花布は、中国の民間伝統工芸品であり、古来より綿花と藍を用いて織られ染められてきました。
被服、布団カバー、風呂敷などとして永く庶民の暮らしの中に溶け込んでいましたが、
近代化とともに、実用品としての伝統が徐々に廃れてきました。

上海の「中国藍印花布館」は、日本の久保マサさんが1990年に69歳の時に開館しました。
マサさんは1972年、国交正常化に伴い50歳過ぎてから初めて中国にわたり、
数十年間、印花布の故郷を訪ね歩きました。
時代とともに見かけなくなっていった藍印花布を各地に収集に行い、
中国の伝統工芸品を守ろうという情熱が中国の人々を動かし、
支援も受けて起業に成功しました。

初めて「中国藍印花布館」に訪ね、その藍印花布の模様は実にダイナミックで、
乱舞する蝶、はげしく泳ぐ魚、風の中を飛ぶ鳥、、、
抑えきれない歓喜や興奮が伝わってきます。
その藍と白は、私の目や心を静かに満たしてくれました。