2023年4月14日 ふたたび『ふりさけ見れば』

日本経済新聞の朝刊に連載している『ふりさけ見れば』が、
私が中国出張している間で最終回を迎えました。
あまり歴史小説になじみのない私ですが、題材が唐代の中国を背景したものだったため、
読むのが毎日の楽しみの一つになっていました。

その小説は古代における日本と中国の関係を縦糸、遣唐使を横糸、
「魏略」第三十八巻を背景として、阿倍仲麻呂と吉備真備の青年から
最期までの五十年にわたる物語です。

唐代(618~907)の中国は約300年にわたり周辺の国々に大きな影響力を持っていました。
日本は唐代の文化、制度や文物を輸入する目的で、630年から遣唐使が現れました。
仲麻呂もその一人として海を渡り、
日本という国と天皇の正当性を明らかにするための史書を作ることに専念、
帰国のチャンスがありながら異国で生涯を終えました。

物語の中、もう一人重要な人物として、鑑真和上も登場していました。
聖武上皇は仏教戒律に基づく国作りを目指し、
この戒律の授ける権威として鑑真を招聘しました。
鑑真は10年間にかけて合計6回、唐から日本への渡海に挑み、
5回目で視力を失いながら6回目で薩摩に上陸、
日本に戒律を伝え、受戒制度を整えました。
晩年、唐招提寺を創建、西を向いて座って生涯を終えた伝説が彩られていました。

『ふりさけ見れば』の作者、安部龍太郎さんのオフィシャルサイトに、
「25年前に一人で中国を旅して、その時感じたのは、
日本の歴史や文化は、東アジア、特に中国の影響抜きに語れないこと。
日本を花に例えるなら中国は根と幹であり、
いつの日か日本と中国を結ぶ小説を書きたいと思った」
とつづられてます。

阿倍仲麻呂の短歌
天の原 ふりさけ見れば 春日なる  三笠の山に 出でし月かも
私も日本での生活の折にその地から月や星を眺め、
何とも云えない心境になったことがあり共感しています。